スタートアップはなぜ赤字が多い?赤字でも資金調達できる理由と黒字化までの仕組みを解説

はじめに

スタートアップの資金調達ニュースを見ていると、「〇億円を調達」という見出しを目にする一方で、「赤字なのに、なぜ資金調達できるのだろう」と疑問に思ったことはないでしょうか。

実は、スタートアップにとって赤字は、必ずしも経営がうまくいっていないことを意味しません。 将来の大きな成長を目指し、プロダクト開発や人材採用、営業・マーケティングへ積極的に投資した結果として、一時的に赤字になるケースが多くあります。

また、資金調達ラウンドを知ることで、その企業がどの成長段階にあり、何を目指して投資を行っているのかも見えてきます。

この記事では、スタートアップに赤字企業が多い理由や、資金調達したお金の使い道、投資家が赤字をどのように評価しているのかをわかりやすく解説します。


この記事でわかること

  • 資金調達ラウンドから企業の成長段階を読み解くポイント
  • スタートアップに赤字企業が多い理由
  • 資金調達したお金の使い道
  • 投資家が赤字企業へ投資する理由

スタートアップに赤字企業が多い3つの理由

スタートアップが赤字になるのは、経営がうまくいっていないからとは限りません。

むしろ、将来の大きな成長を目指す企業ほど、利益よりも投資を優先するケースが多く見られます。

では、なぜ多くのスタートアップは赤字でも成長を目指すのでしょうか。

ここでは、スタートアップに赤字企業が多い代表的な3つの理由を解説します。

小さな利益ではなく、大きな成長を目指しているから

一般的な企業では、利益を積み重ねながら着実に事業を成長させることが重視されます。

一方、スタートアップは短期的な利益よりも、市場で大きなシェアを獲得することを優先するケースが少なくありません。

例えば、新しいサービスが広く利用される前に利益を確保しようとすると、開発やマーケティングへの投資が十分にできず、競争力を高める機会を逃してしまう可能性があります。

そのため、多くのスタートアップは利益を早く出すことよりも、まずは事業を大きく成長させることを目指します。

十分な顧客基盤や競争優位性を築いた後に利益を生み出す――そんな成長戦略を描いている企業が多いのです。

数年後の成長を見据えて先行投資するから

スタートアップでは、現在の利益ではなく、数年後の成長を見据えて投資を行います。

プロダクトやサービスの開発には時間がかかります。さらに、人材の採用や組織づくり、新たな市場への展開なども、一朝一夕で成果が出るものではありません。

こうした投資は、すぐに売上へ結び付くとは限りませんが、将来の成長には欠かせないものです。

だからこそ、スタートアップは短期的な利益を犠牲にしてでも、未来の成長に向けた投資を優先します。

今の赤字は、未来の成長へ向けた「投資の結果」と考えると、その意味が見えてきます。

事業として成り立つ仕組みをつくる必要があるから

優れたアイデアや技術があっても、それだけでは事業は成り立ちません。

プロダクトやサービスを開発するだけでなく、顧客に利用してもらい、継続的に価値を届けられる仕組みを築く必要があります。

そのためには、営業やマーケティング、カスタマーサポート、組織づくりなど、さまざまな分野への投資が欠かせません。

例えば、Fundriveでも紹介した建設業界向けPhysical AIを開発するZen Intelligenceは、シリーズAで総額25億円を調達しました。この資金は技術開発だけでなく、社会実装や事業拡大を進めるための投資にも活用されています。

スタートアップが資金を必要とする理由は、単に「良いサービスをつくるため」だけではありません。事業として持続的に成長できる仕組みをつくるためでもあるのです。

資金調達したお金は何に使われるのか

スタートアップが調達した資金は、赤字を埋めるためのお金ではありません。

将来の成長を前倒しするための投資です。

経済産業省も、スタートアップを「新たな価値を生み出し、日本経済の成長を担う存在」と位置付け、J-Startupをはじめとしたさまざまな支援策を展開しています。

では、スタートアップは資金調達したお金を具体的に何へ使っているのでしょうか。

多くのスタートアップに共通する使い道は、大きく3つあります。

より良いプロダクト・サービスを生み出すため

スタートアップにとって、プロダクトやサービスは会社の競争力そのものです。

そのため、資金調達後は研究開発や機能改善、新技術への投資などが積極的に行われます。

例えば、Fundriveで紹介したZen Intelligenceは、シリーズAで総額25億円を調達し、建設現場で活用されるPhysical AIの開発だけでなく、社会実装や事業拡大も見据えた投資を進めています。

短期的には利益につながらなくても、将来より大きな価値を生み出すための投資だからこそ、多くのスタートアップは研究開発へ積極的に資金を投入しています。

成長を支える組織をつくるため

どれほど優れたプロダクトやサービスがあっても、それを開発し、顧客へ届ける人がいなければ事業は成長しません。

そのため、スタートアップにとって採用は、事業成長に欠かせない重要な投資です。

しかし近年は、少子高齢化による労働力人口の減少を背景に、人材獲得競争が年々激しくなっています。特にエンジニアや営業職などの専門人材は採用が難しく、人材紹介会社を利用する場合は、年収の約30%程度の紹介手数料が発生する契約が一般的です。職種や年収によっては、1人を採用するだけで200万〜300万円以上の採用コストになるケースも珍しくありません。

こうした費用は、売上が伸びてから支払うのでは間に合わないこともあります。

だからこそ、多くのスタートアップは資金調達によって必要な資金を確保し、将来の成長を支える人材へ先行投資を行います。

資金調達は、人を増やすためのものではありません。

未来の成長を実現するために、必要な仲間と組織をつくるための投資でもあるのです。

顧客に知ってもらうためのマーケティング投資

優れたプロダクトやサービスを開発しても、その存在を知ってもらえなければ売上にはつながりません。

そのため、スタートアップは営業活動や広告、Webマーケティング、展示会への出展など、顧客へ価値を届けるための投資も積極的に行います。

一方、資金調達をしていない企業は、利益の範囲内で少しずつ広告や営業活動を広げるケースが一般的です。

しかし、スタートアップは市場で早く認知を獲得し、競合より先にシェアを広げることが重要になります。

利益が十分に出ていない段階でも、資金調達によって営業やマーケティングへ先行投資できることが、スタートアップの大きな特徴です。

つまり、資金調達とは単に会社を維持するためのお金ではありません。

「良いサービスをつくる」だけでなく、「より多くの人に届ける」ための成長資金でもあるのです。

資金調達ラウンドから見えてくる会社の現在地

スタートアップの資金調達ニュースを見ると、「シード」「シリーズA」「シリーズB」といった言葉を目にすることがあります。

これらは単なる資金調達の名称ではありません。

資金調達ラウンドは、その企業がどの成長段階にあり、何を目指して投資を進めているのかを示す”現在地”でもあります。

例えば、シード期の赤字と、シリーズC以降の赤字では、その意味は大きく異なります。

創業直後で事業の土台をつくるための赤字なのか、それとも、さらなる成長を目指して先行投資を続けている赤字なのか――同じ赤字でも、その背景は大きく異なります。

資金調達ラウンドを知ることで、その企業が「今、どんな挑戦をしているのか」が見えてきます。

ここでは、代表的な3つのステージに分けて見ていきましょう。


シード|事業の土台をつくる段階

シードは、スタートアップが事業を立ち上げたばかりの初期段階です。

この時期は、プロダクトやサービスを開発し、市場に受け入れられるかを検証することが最優先になります。

そのため、売上はまだ小さい一方で、開発費や採用費などの支出が先行します。

利益を出すことよりも、「この事業は本当に成長できるのか」を証明することが求められる段階です。

この段階の赤字は、事業の土台をつくるための赤字と言えるでしょう。

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シリーズA・B|成長を加速させる段階

プロダクトやサービスが市場に受け入れられ始めると、企業は次の成長を目指します。

シリーズA・Bでは、開発だけでなく、人材採用やマーケティング、営業体制の強化など、事業を一気に拡大するための投資が中心になります。

売上は伸び始めていても、それ以上のスピードで投資を行うため、赤字が続く企業も少なくありません。

この時期に投資家が期待しているのは、目先の利益ではなく、「どれだけ大きな市場を獲得できるか」です。

利益よりも成長を優先する――それが、このステージの大きな特徴です。

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シリーズC以降|利益とのバランスが問われる段階

シリーズC以降になると、事業の成長だけでなく、収益性も重要なテーマになります。

もちろん、新しい事業や海外展開などへ投資を続ける企業もあります。しかし、投資家は「成長しているか」だけでなく、「将来的に利益を生み出せる事業なのか」も重視するようになります。

そのため、この段階では、赤字であること自体が問題なのではありません。

その赤字が、さらなる成長につながる投資なのか、それとも改善すべき赤字なのかが問われるようになります。

企業は、成長と収益性のバランスを取りながら、次のステージを目指していくのです。

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投資家は「今の利益」ではなく「未来の価値」を見ている

「赤字なのに資金調達できる」と聞くと、不思議に感じるかもしれません。

しかし、投資家が見ているのは、現在の利益だけではありません。

スタートアップが挑戦している市場の将来性や、経営チームの実行力、そして現在の赤字が将来の成長につながる投資なのかを総合的に判断しています。

例えば、プロダクト開発や優秀な人材の採用、新たな顧客を獲得するためのマーケティングなどは、将来の売上や企業価値を生み出すための投資として前向きに評価されます。

一方で、成長につながらない支出が増え続けている場合は、赤字であること自体ではなく、「何にお金を使っているのか」が厳しく問われます。

つまり、投資家は「赤字だから出資する」「黒字だから安心する」という単純な考え方ではありません。

その企業が描く未来に実現可能性があるのか。そして、その赤字が未来の価値を生み出すための投資になっているのか。

投資家が見ているのは、今の利益ではなく、その投資が未来の価値につながるかどうかなのです。

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